友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「籍を入れたままでも、関係は修復できるはずだ」
「時間がかかりすぎる」
「あのなぁ。さっきから一体、なんなんだよ。否定ばっかりしやがって……」
「冷静になれ」

 瑚太朗の顔を見るたびに、鏡に映る自分を覗き込んでいるような気がして吐き気がした。
 同じ境遇、同じ悲しみを味わった唯一の味方だと思った時もあったが、そんなものは幻想だ。
 俺は社長の息子で、こいつは社長の妹の子ども。
 周りからの扱いは似たようなもんでも、のしかかる責任の重さが違う。

「後悔するぞ」
「そんなの、自分がよく一番わかってんだよ……」

 俺はずっと、瑚太朗が羨ましくて仕方なかった。

 だから、こいつと同じ手段を講じて幸せになろうと思った。
 だが、結局それはただの劣化コピーでしかない。
 別々の人間がまったく同じことをしたって、同一の結果が得られるはずがなかったのだ。

「手のかかる従兄弟だ」
「うるせぇ! お前が意味不明な結婚をしたのが悪いんだろ!?」
「それを真似たのは、お前の意思だ」
「くそ……っ」

 そう言われてしまえば、反論の余地はない。
 隣の芝生は青いとは、よく言ったものだ。
 焦れば焦るほど、幸せはこの手からこぼれ落ちていく。
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