友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「蛍」
「なんだよ」
「嫁が大事なら、伝えたほうがいい。莉子と交流がなければ、取り返しのつかないことになっていた」

 俺が鬱々な気持ちをいだいてどうしようもなくなっているのを、見かねたのだろう。
 あいつは恩着せがましく、感謝しろとでも言いたげに事実を突きつけてくる。
 それが苛立って仕方なかった。

「お前は、いいよな。全部他人事で。俺とそんなに年も変わんねぇのに、好きな女と結婚できて、愛されて。幸せそうで。それに比べて……」
「そっくりだ」
「誰と」

 瑚太朗は、俺の質問に答えなかった。
 だが、声を聞かなくてもだいたい分かる。
 こいつの交友関係は、恐ろしく狭いからだ。

 あの女か、菫さんか……。
 どっちだろうな。

『たろーちゃん!』

 前者がこいつの名を呼ぶ姿を脳裏に思い浮かべ、即座にかき消す。
 頭の中がお花畑な子犬みたいな女が、嫉妬なんざするわけがねぇ。
 なら、やっぱり……。
 瑚太朗が思い浮かべているのは、彼女のほうだろう。

「菫さん、俺のことなんて言ってた?」
「嫁を泣かせるなんて、クソ野郎のすることだ」
「それ、お前の奥さんだろ」
「バレたか」

 こうして軽口を叩き合えるくらいの関係になれた同性は、こいつくらいなものだ。
< 134 / 238 >

この作品をシェア

pagetop