友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 焦る私にお母さんはそう力説すると、娘のショルダーバックを勝手に漁る。
 その後、着信履歴から蛍くんに電話をかけ始めてしまった。
 しっかりスピーカーになっているせいか、コール音が聞こえる度にバクバクと心臓が高鳴る。

『やっと、俺と話し合いをする気になりましたか』
「うちの娘を、よくも誑かしてくれたわね!」
『お義母さん……?』
「ええ。そうよ。あなたとうちの娘が離婚することになったと聞いたの」

 蛍くんは私の母親から連絡がきたことに、驚いている様子だった。
 彼は苛立ちを隠せないらしく、ピシャリと離婚を否定する。

『こちらに、そのつもりはありません』
「安心して頂戴。再婚相手は、お見合いで決めることしたから」
『俺達はまだ、夫婦です』
「関係は破綻しかかっているのでしょう?」
『それは……』
「なら、まったく問題はないわね」

 夫はまだ何かを言いたそうにしていたが、この状況で反論しても無意味だと悟ったのだろう。
 ぐっと言葉を詰まらせ、黙り込む。
 母親はその隙を逃さず、畳みかけた。

「本気で娘を失いたくないと思うのなら、取り戻しに売ればいいだけのことよ」
『わかりました』
「お、お母さん!?」
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