友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 再び九尾夫妻を頼るわけにはいかず、実家に帰った。

「一体こんな時間に、どうしたの……!」
「蛍くんと、別れるかも……」
「だから言ったじゃない! 交際0日婚なんてやめろって!」

 お母さんはそれ見たことかと嬉々としていかに自分の意見が正しいかについて語ったあと、山のように積み重なった釣り書の一番上から書類を差し出してくる。

「この方は、バツイチでもいいと言ってくださっているわ。気持ちを切り替えなさい」
「私はまだ、既婚者だよ? お見合いなんて……」
「ああ、もしもし? 桐川です。お世話になっております……」

 お母さんは嫌がる私の意見など無視して、勝手に縁談の約束を取りつけてしまった。

「う、嘘でしょ……?」

 ――これは、まずい事になった。
 夫から全力で逃げてる場合なんかじゃない。
 お見合いをしないで済むように、どうにか脱出しなくちゃ……! 

「せっかくだから、あの人も呼びましょう。菫の伴侶に相応しい男性か判断してもらったら、今度こそ夫婦生活が円満に続くはずよ!」
< 144 / 238 >

この作品をシェア

pagetop