友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 もう二度と帰ってこないつもりだったのに、蛍くんと暮らす家に着いた途端にほっとするなんて、おかしいよね。
 どうやら、自分でも気づかぬうちにここが私の帰る場所になっていたようだ。

「蛍くん。手、洗わないと……」
「逃げる口実ですよね」
「ち、違うよ! ちゃんと向き合うって、決めたから。ずっと繋いでなくても、大丈夫だよ?」
「信じられません」
「ええ……?」
「菫さんには、前科がありますから」
「うぅ……」

 それを言われると、弱いんだよなぁ。

 どうやったら彼を、納得させられるのだろう?
 私は必死に考えを巡らせながら、問いかけた。

「私のこと、信じられない?」
「信じたいですよ。でも、俺から逃げたじゃないですか」
「じゃあ、玄関の前! 5分だけ、立ってて!」
「嫌です。それだけあれば、ベランダから避難経路を使って外へ出られますよね」
「信用ないなぁ」

 今は軽口を叩き合う暇があれば、それだけ酷いことをしてごめんなさいと反省をする場面だ。
 私は彼に許しを請うべく、お伺いを立てる。

「どうしたら、手を離してくれる?」
「何があっても、俺の妻で居続けるって、約束してください」
「いいよ」
< 152 / 238 >

この作品をシェア

pagetop