友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 私は蛍くんの奥さんなのに、彼の内面を知ったつもりになっていた自分を恥じた。

「私、もしかして蛍くんのことを全然知らない……?」
「そうですよ。これからたくさん教えてやろうって時に、菫さんが周りを巻き込んで大事にするから……」
「私のせいなの!?」
「俺はまだ、納得してませんよ。夫よりも、あいつらを選んだこと……」

 彼が思い浮かべているのは、間違いなく九尾夫妻だろう。
 今だってたくさん迷惑をかけているのに、これ以上面倒事に巻き込んだら罰が当たる。

「そ、その話は、座ってゆっくりしよう? ね?」

 今度こそ夫婦間で解決しなければと話し合いの延長を申し出た。
 すると彼は、ようやく私の指先を離してくれた。

「わかりました」
「リビングで待ってて!」

 それにほっと胸を撫で下ろす暇などない。
 急いで手を洗い、身を清めて寝るだけの体制を整えるため、バタバタと部屋中を走り回る。

 ――5分なんて条件、つけなきゃよかったかも……! 

 私は目が回るような速度でリアルタイムアタックを開始し、約束の時間から数秒遅れて夫の前に姿を見せた。

「お、お待たせ……!」
< 154 / 238 >

この作品をシェア

pagetop