友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 かろうじて服は着ているけれど、毛先や太ももから拭いきれなかった水滴がポタポタと床に垂れている。
 まさに濡れ鼠のような状態で彼の前に出れば、驚かれてしまった。

「入浴まで、済ませたんですか」
「だ、だって……! 蛍くんと仲直りして、一緒に眠りたかったから……!」
「それって、期待してもいいですよね」

 夫は恥ずかしげもなく、口元に不敵な笑みを浮かべる。
 私は目を白黒とさせながら、コクリと頷いた。

「ご、ご希望に添えるかは、わからないけど……」
「よかった」

 どうやらこちらの反応は、彼のお気に召したようだ。
 蛍くんが優しく微笑む姿が見れたせうか、心がぽかぽかと暖かな気持ちに包まれる。

「話し合いはできるだけ、険悪な雰囲気にならないようにします」
「うん!」

 幸せいっぱいに釣られて笑顔を浮かべれば、彼は何を思ったのか。
 私の額に口づけを落とすと、そのまま手を洗いに行ってしまった。

 水音が聞こえてくるあたり、どうやら信用してくれたようだ。

 ――よかった。
 これで、一安心だね。

 私は蛍くんの部屋へ勝手にお邪魔し、ベッドの縁に座ってショルダーバックを漁る。
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