友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 彼は容赦なく、畳みかける。

「これからはもっと、自己開示をします。隠し事もしません。だから――もっと俺に、沼ってください」

 そんなふうに言われてしまったら、こちらも心をときめかせずにはいられない。
 今まで以上に心臓が高鳴り、頬が紅潮する。
 彼に言い寄られるのは、あとにも先にも――妻である私だけ。

「ね?」

 そう思ったら、キラキラと光り輝く王子様みたいなオーラと満面の笑みを浮かべられたら、意地になっているのが馬鹿らしくなってくる。

 友情結婚は止めて、恋愛結婚を提案しようと思ったのに……。
 私の作戦は、どうやら失敗に終わりそうだ。

「友達じゃなくて……。本当の夫婦みたいに、生活してくれる?」
「菫さんが望むのなら、喜んで」
「ほんと!?」
「ええ。もちろんです。だって俺達、相思相愛ですもん。ねぇ?」

 蛍くんは含みのある笑みを浮かべたあと、ぱっと両手を離す。
 それに名残惜しさを感じて残念がれば、彼は当然のように私を抱き上げて寝室まで移動した。

「これからは、一緒のベッドで寝ましょう」

 蛍くんは口元だけを綻ばせたあと、私と一緒に寝台の上に寝転がる。
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