友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 思いを通じ合わせてすぐに行動へ移すあたりが、彼らしくないと言うか……。なんだかいつもと違うような気がして、ダラダラと額から冷や汗が流れる。

「い、今から!?」
「菫さんだって、そのつもりだった癖に」
「そ、そうだけど……!」
「今までずっと、いちゃつきたいのを我慢していたんですよ。このくらいのご褒美はもらっても、許されると思いませんか」

 私達は夫婦になってから、恋人らしいことはほとんどした覚えがなかった。
 半年ほど経過して、ようやく思いを通じ合わせられたのだ。
 彼の主張は、まったく間違ってなどいなかった。

「菫さん、顔真っ赤。茹でタコみたいですよ」
「み、見ないで……っ」

 ――確かに、蛍くんと一緒に添い寝がしたいと思っていたけど……! 

 あまりにも急すぎて、心の準備が出来ていない。
 恥ずかしがる姿を見られたくなくて顔を覆い隠せば、強引に手首を捕まれる。
 そうして、頭上でまとめ上げられてしまった。

「そんなんじゃ、安眠なんてできそうにないですね?」
「今日の蛍くんは、意地悪だ……」
「俺はずっと、こんな感じですよ」

 磔にされた罪人のような姿を晒す羽目になるなど思わず、苦言を呈する。
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