友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「菫さんだって、ご両親といい関係を築けていませんよね。そんな状態で命の危機に駆けつけるんですか」
「う……っ。それは……!」

 そこを突かれると、反論のしようがない。

 こんなことになるなら、もっと両親と仲良くしておけばよかった……! 

 そう後悔しながらも、どうにか説得出来ないだろうかと思案する。
 しかし、どれほど1人で考えたところで、名案は浮かばない。

「顔を見せに行くなら、俺を脅して跡を継がせようとして無駄だと言っとけ」

 蛍くんは苛立ちを隠せない様子でスマートフォンに向かって叫ぶと、通話を終えてしまった。

「本当に、いいの……?」
「どうせ、大したことはありません。大袈裟なんですよ。この前から……」

 彼はこうした呼び出しが今までも何度かあったと言わんばかりの発言をしたあと、暗い表情で仕事を再開する。
 どうやら本当に、このまま何事もなかったかのように過ごすつもりらしい。

 ――本当に、いいのかな?

 九尾夫妻の報告を受けてから、なぜか胸騒ぎが止まらない。
 それは普段は無口な蛍くんの従兄弟が、切羽詰まった声音で状況を説明してくれたからなのだろうか。
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