友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「行こう」
「でも……っ。お母様とは、まだ……!」
「会話をしたって、無駄な時間を過ごすだけだ」
「蛍くん……!」

 こんな状態ではどれほど言葉を尽くしても、止まれない。
 蛍くんは病室にご両親と九尾夫妻を残し、外へ出てしまった。

 ――デートの時に自分の気持ちを伝えてくれた時は、こうなることを見越して覚悟は出来ていると発言をしていたのに……。
 いざ現実に直面すると、冷静さを欠くのだろう。

「このまま別れて、本当にいいの?」
「当たり前です」
「後悔、しない?」
「しませんよ」

 蛍くんは考える様子もなく即答する
 その様子が私には、無理をしているようにしか見えなかった。

「やっぱり、あの時篝火グループを継げばよかったって思っても、過去には戻れないよ?」
「わかっています」
「うんん。蛍くんは、やっぱり逃げてる」

 妻として険悪な雰囲気になりたくないのなら、一緒に彼がいだくつらさに向き合うべきだ。
 でも……。
 それじゃきっと、みんなが不幸になる。
 そんな気がしたから、私は心を鬼にして夫へ現実を突きつけた。
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