友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 こうして怒り狂ったところでお母様の病状は回復しないし、事態は好転しないのだと。
 だからこそ、弱音を吐いている自分を見られたくなかったんだと思う。
 蛍くんは私に嫌われるのを、恐れていたから……。

「蛍くんがどんな選択をしても、ずっと一緒にいるよ」

 今の私ができることがあるとしたら、1つしかない。
 それはどんなに酷い言葉を投げかけられようが、恐ろしい姿を見たとしても、彼に寄り添い続ける。
 それだけだ。

「私からはもう二度と、繋いだこの手は離さない。そうやって、約束したもん!」
「菫さん……」

 私達はじっと見つめ合い、お互いの気持ちに嘘がないことを確認し合う。
 彼の瞳は、今にも泣き出してしまいそうなほどに揺れていた。

 ――悲しむ蛍くんを、勇気づけたい。
 そんな思いから彼と積極的に触れ合い、少しでも苦しみを和らげられないだろうかと考え、行動に移す。

 ピトリと控え目に彼の身体に寄りかかれば、もっと密着し合いたいと言わんばかりに蛍くんの逞しい腕が私の背中に回って引き寄せられた。
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