友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 私の姉、桐川散葉(きりかわちるは)は数年前に両親の理想を体現した素敵な旦那さんと結婚したが、妊活中に子どもが望めない身体だと発覚している。
 その結果、妹の私は両親の期待を一身に受ける羽目になったのだ。

『孫を抱くため、あなた達を産んだようなものなのに……』

 両親の落胆は相当なもので、年齢を重ねるごとに「早く結婚しろ」コールが大きくなりつつある。
 だが、私はその攻撃に屈するつもりはなかった。
 妊娠出産を強要されればされるほど、どんどん婚活する気が失せていくからだ。

「なんで私がお母さんを喜ばせるために結婚して、子どもを作らなきゃいけないの? 産んだら終わりじゃないんだよ」
『それは、そうだけど……』
「私はみんなの夢を叶えるために、結婚するつもりはないから」
『菫……』

 お母さんは電話越しにまだ何かを言いたそうにしていたが、その先に紡がれる言葉を聞く気にはなれなかった。

「このあとも、仕事があるの。切るね」

 一方的に言い放つと、画面をタップして通話を終える。

「はぁ……」

 この会話を何回繰り返せば、両親からお小言を言われずに生活できるのだろう。
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