友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 お姉ちゃんは気を利かせて提案してくれた。
 しかし、その好意を素直に受け入れて敷居を跨ぐわけにはいかない。
 ここはあくまで、通過点なのだから……。

「俺は、苦になりません。立ち仕事が多いので……」
「あら、そうなの?」
「仕事は何を……」
「菫さんと同じです」
「ファッション雑誌の編集者だよ。私の部下なの」
「職場結婚?」
「いつからお付き合いを……」
「交際期間はありません」

 私達が玄関先で挨拶を終えたらすぐ帰る姿勢を見せれば、ここぞとばかりに質問が飛び交う。
 蛍くんは顔色を変えずに、淡々と返答していたのだが……。
 彼の爆弾発言が飛び出した直後、この場の空気が一触触発な空気へ変化した。

「同棲どころか、交際もせずに結婚したの!?」
「どうかしてる!」

 それはすべて、両親のせいだ。
 彼らは口々に「なんでこんな男と結婚したんだ」と騒ぎ立て、疑いの眼差しを向けてくる。

「本当に、結婚したんだろうな?」
「うん。免許証、見る? ちゃんと、名字が変わっているでしょ?」
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