友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 両親に負けて溜まるかと怒声を響かせた姿を見かね、お姉ちゃんが慌てて割って入ってくれた。
 しかし、その言葉すらも今の私にとっては怒りを燃え上がらせる地雷でしかなかった。

「子どもなんていらない! 娘が2人共嫁に行くことは叶えてあげたんだから、それだけで満足してよ!」

 こんなことになるなら、蛍くんを紹介なんてしなければよかった。
 後悔でいっぱいになり、泣くのをぐっと堪えながら視線を逸らす。
 桐川家の玄関には、嫌な沈黙が満ちていた。

「大事な娘さんが得体のしれない人間を連れてきて、交際0日で結婚すると言われたら、動揺するのも無理はありません」
「伊瀬谷さん……」
「ですが……。俺達は2年ほど、毎日のように職場で顔を合わせています。プライベートな会話はほとんどありませんでしたが、菫さんの働きぶりは俺が一番よく知っています」

 しかし、それは数分も経たずに霧散する。
 成り行きを見守っていた夫が私を庇うように前へ出て、両親に言葉を尽くしてくれたからだ。
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