友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「蛍くん。手伝ってもらったのに、私のせいで……ごめんね」
「いえ。気は、晴れましたか」
「うん! 今はとっても、清々しい気分だよ!」

 満面の笑みを浮かべれば、彼も釣られて口元を綻ばせる。

「普段の明るく元気な菫さんに、戻りましたね」
「蛍くんがここに連れてきてくれたおかげ! 本当にありがとう」
「そうですか。よかったです」

 夫の貴重な姿が見られて、本当によかった。
 こうして気分をよくしたあと、心の中にある疑問が浮かぶ。

 ――どうして、ゲームセンターを選んだんだろう……? 

 彼が娯楽を嗜むイメージなど、一切ない。
 私は不思議に思い、問いかける。

「ゲーム、好きなの?」
「特段好きと言うわけではありません。暇つぶしの一環で、学生時代に嗜んでいました」
「そうなんだ?」
「自宅に帰るのが、嫌だったので。ショッピングセンター、娯楽施設、図書館……。転々としましたが、結局自分の居場所は見つけられませんでした」

 蛍くんが淡々と語る過去は、彼が感情を押し殺して生きるようになった理由を体現している。
 脳天気に過ごしていた私とは、大違いだ。
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