友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 その答えは、蛍くんの気まずそうな表情を見ている間に出た。
 たとえ彼が、一生友人のままでいたいとしても――。
 私は蛍くんともっと仲良くなりたいし、好きになりたいと願っているからなのだと。

「違ったら、ごめんね」
「いえ……。事実なので……」

 夫は深いため息を溢したあと、テーブルの上に置かれていたコーヒーカップを手に取る。
 その後液体を口に含む姿は、とても優雅だ。

 ――なんでもっと早くに、いいところの出だって気づけなかったんだろう? 

 細かな気配りができなくて鈍感だからこそ、両親にありがた迷惑な世話を焼かれていたのかもしれない。
 もしもそれが理由なら、私は変わるべきだ。

「まさか、言い当てられるとは思いませんでした」
「私達の間に愛はないけど、一応奥さんだもん。旦那さんのことは、ちゃんと見てるよ?」

 せっかく夫婦になったのだから、些細な表情の変化を見逃したくない。

「不安なことや、相談したいことがあったら、いつでも声をかけてね。私、待ってるから」

 そう思って提案すれば、蛍くんはだんだん気分が落ち着いてきたようだ。
 コーヒーカップをテーブルの上に戻すと、聞き取りづらい声で呟いた。
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