友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「そんなに浮かない顔しないで。いつもみたいに、余裕綽々な蛍くんでいてほしいな」
「俺のこと、そんなふうに思っていたんですか」
「違うの?」
「いや……。抑制している感情が読み取れないのであれば、ある意味成功と言えます。問題ありません」

 蛍くんは視線をさまよわせたあと、迷いを打ち消すかのようにこちらをじっと見つめた。
 その瞳の奥をじっと覗き込む限りでは、陰鬱な空気は霧散している。

 ――なんだかちょっと、寂しいな。

 そう思ったのは、彼が心を開いてくれていたら、こうやって取り繕う必要はないんだろうなと感じたからだった。

「いつか、私にも素で接してくれると嬉しいな」
「菫さんの前では、だいぶ出してますよ」
「全然そんな感じがしないなぁ。やっぱり、ずっと敬語だから?」

 私は蛍くんと夫婦になってから、随分と欲張りになってしまったらしい。
 もっと知りたい。
 そんな気持ちが溢れて止まらないのは、なぜなのか。

「こちらのほうが、見た目と合っているのでは……」
「そうかな? 私は、時折無理をしているように見えるよ」
< 78 / 238 >

この作品をシェア

pagetop