友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「うん……。結婚適齢期になると、こう言う面倒事を避けては通れなくて……」
「わかります。俺も、同じ悩みをかかえているので」

 私は部下の口から思わぬ発言が飛び出てきて、面食らう。

 ――今、なんて言ったの?

 こちらがそう声に出さずとも、彼は唖然とした表情だけで何を伝えたいのかを理解したようだ。
 涼しい顔で、淡々と悩みを打ち明けた。

「どこの家も、みんなそうなんですね。早く彼女を連れて来い。孫の顔を見せて……。子どものキャリアよりも、自分の欲望を押しつける……」
「わかる! 両親はあなたのためを思って言っているのよ、なんて呆れたように言うけど……。大きなお世話だよね。結婚して子どもを産むのが幸せなんて価値観は、今どき流行らないもん」
「確かに」
「いつまで経っても、昔の価値観のままでなんかいられないのにね。今は、日々、アップデートしていかなきゃ!」

 最初は何を言うかと警戒していた。
 でも、話を聞いてみたら意外と盛り上がったのには驚くしかない。
 自分と同じ悩みを持つ同志というのは、どうやら本当のようだ。
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