友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「帰りましょう」
「うん!」

 その大きな指先をしっかりと握りしめて会場を出た私達は、顔を覆い隠していた仮面を受付へ返却してから帰路につく。

 ――さっきまで、ずっと表情が見えなかったからかな。
 こうして蛍くんの顔を見られるようになって、ほっとしたような……。
 違和感を感じるような……。
 そんな不思議な感覚をいだきながら、繋いだ指先から伝わる熱を堪能する。

「まだ少し、時間がありますね」
「どこか行く?」
「2人暮らしができそうな、いい物件は見つかりましたか」

 こちらが熱心に賃貸雑誌を見つめていたのを、彼は覚えてくれたようだ。
 私はガサゴソと手持ち鞄を漁り、目星をつけたところに付箋が山程貼ってある冊子を取り出す。

「私がいいなぁと思った物件は、このあたりだよ!」
「ありがとうございます。実際に同居するかを決めるのは、もう少しあとになりますが……。内覧、してみますか」
「する!」

 せっかくの休日だ。
 今後の生活をより豊かにするために使いたい。
 そう思う気持ちはどうやら彼も一緒だったらしく、優しく口元を綻ばせてくれた。
 それが何よりも嬉しくて、私は蛍くんと2人で楽しく内覧を済ませた。
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