弱さを知る強さ
「今、どこに実習行ってんの」
「母性」
母性は産科分野だ
研修医の時に各分野周るんだが
それ以降、母性はノータッチ
「わかるかな?
ちょっとみして」
母性の看護の教科書が机の上に広げられていて
それを借りて復習をすることにした
「懐かしい...」
「この疾患でどんな症状がでる?」
これどういう意味?
数値として正常?」
ここぞとばかりに聞いてはまとめてを
繰り返してなんとか今日の分の記録と
明日の看護計画は立てられたよう
気づけば夜10時
「腹減ったし出前でもとるか」
「私いま、金欠なんだよね」
「いいよ、俺が出すから」
「やったー、ごちです!」
無邪気で素直で努力家で
いいところなんだけどなぁ
「何ピザがいい?」
「金森先生が頼んだピザ、1ピースちょうだい」
「それだけ?」
「うん、じゅうぶん」
「昼ごはんどうしてるの?」
「作れる日は作って持って行くけど作れない日は食べない
昼もなるべく記録したいし」
悪びれもせず
明日の実習の準備をしながら話す
「はぁ...」
「あっ」
俺のため息でダメなことに気づく
「お金ないし...時間ないし...」
「しっかり食べて体力つけないと
実習や国試というストレスに勝てない
それは持病ない普通の人でも一緒のこと
そんなことしてたら本当にもたないぞ」
「...わかってる」
「俺はもう本当にダメってなったら
速攻、オペするからな
実習中であろうが国試前であろうが」
「その基準って?」
「詳しく検査しないとわからないけど腹痛が頻繁におきるとかエコーしたり検査したり音聞いたり総合的な診断で決める」
「約束守っててもひどくなったら
オペする可能性あるってこと?」
「もちろん」
初めてしっかり病気について
会話のキャッチボールができてる
今までは病気の会話から逃げてたけど
なんとか受け入れようとしてるのが伝わる
「あとどれくらい悪くなったらオペ適応?」
「今でもオペ適応だって」
「私の聞きたいこと伝わらない...」
「ははっ伝わってるよ?
ちょっと意地悪してるだけで」
「もう!」
「そうだなぁ...
100が即オペとしたら70くらいかなぁ
30くらいからそろそろオペはしたほうがいい」
「そっか」
「お前の予想はどれくらいだった?」
「90くらい?」
「そんなしんどいのか?」
「いやいやそうじゃなくて...」
体感はやっぱりしんどいんだろうな
「通院日は火曜と金曜にしよう」
「金森先生が休みだったら?」
「火曜と金曜は病院いるようにする」
「え、そんなことできるの」
「うん」
「わかった...」