弱さを知る強さ

◎恭介◎

今日の担当看護師が余計なことを言った途端あやはの顔が曇った

本人が言いたがらないから俺は聞かない

徹底してたのに
看護師になるくせに
それが言われたくない言葉だったんだろう

鎮静剤の点滴をするためのに内服を飲ませるか?
なるべくはしたくないけど検査するなら仕方ないか...

内服薬を持って部屋に向かっていたら途中のナースステーションの影に隠れてあやはが立っていた

「どうした?」

声をかけたらこっちをみて逃げて行った
振り向いた顔に涙が流れていた

理由はわからないが何かあったんだと悟った

ナースステーションに入ると看護師たちがあやはの話をしていた

看護師になる子が何もしないだのご飯も食べないだの手のかかるだの...

「患者、そこの陰で全部聞いてましたよ
泣いて部屋に戻ったけど」

「えっ」

「患者の話を聞こえるところでしないほうがいいと思います」

「すみません」

泣いてた理由はこれだな

もう大事な時に何してくれてんだよ
正直腹が立つが看護師の仕事も大変なのは理解している
あいつが拒否をすることで看護師たちの仕事が多少増えてるのは事実だから一方的に責めることはできない

気を取り直してあやはの部屋にいった

...ガラララ

「はい、薬」

あえてなにも触れずに内服薬を渡した

「...金森先生
やっぱり検査しない
家に帰る」

出た
まぁそうなるよな
陰であんなこと言われてたら自暴自棄になるよな

「じゃ明日からの実習は諦めよう」

あえて寄り添わず突き放してみた

「...」

「とりあえず大丈夫だから、俺を信じて寝ろ」

寝て起きたら終わってる始めないと終わらない

「やらない」

「やれ」

「人が怖い」

「ははっ、じゃ俺がやろうか」

「...」

「俺は怖くねぇだろ」

「金森先生はもう怖くないけど...」

「俺が寝てる間にいつも通りささっとやってやる」

「下からの検査は...恥ずかしい//」

「大丈夫、俺は医者だから
恥ずかしがるな、ただの患者だから」

「ただの患者にここまで執着するの?」

執着...してるつもりはないけど...
確かに気にはなる
普通の患者に対しての感情とは違う
気になる、好きなのかもしれない

「...金森先生がやって」

ぼそっと俯きながら言った

やっと任命された
ずっと逃げられてたのに

「上からも下からもカメラも両方俺がやっていいの?」

嬉しかったがあまり嬉しさを出さず接した

「うん...他の人は怖い」

「わかった、準備しよう」

心の中で大きくガッツポーズをした
一歩進んだ
そして俺がやることを許可した

薬を渡して飲んだのを確認してから部屋を離れて検査の準備をした

昼過ぎになって部屋に行くと薬のおかげか眠っていた

「点滴するぞ〜」

小声で話しかけたが返事がない
ちゃんと薬が効いてる

腕を動かして点滴を打つ血管を探した

「...んん」

目覚めたか?

「すぐ終わる、大丈夫だから」

完全におきてるわけじゃない
今のうちにささっと終わらせた

点滴入れてからは一切起きることはない

看護師に手伝ってもらいながら体制を整えて検査を終わらせた

「お疲れ様」

意識が戻るのを待ってる間に好きなもの買ってこよう


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