弱さを知る強さ
◎恭介◎
実習おわって病院じゃなく家に帰ったみたいだけど
電話をしてきて少し成長が見えた
親父のクリニックで本人の様子見て診察して今後の流れを決めようとクリニック集合にした
いつも通り車で実家まで行ってそこから歩いて向かった
着いたらあやはが入り口に立っていた
「突っ立ってねぇで中入れよ」
「...」
中に入ったらまだ患者がちらほらいた
午後の診療時間は19時まで
あと30分で閉まる
「あら、お疲れ様です、恭介先生」
受付の人が俺に気づいた
「お疲れ様です、親父か母さんあいてます?」
「確認しますね」
中に入ってすぐ受付の人と一緒に母さんが出てきた
「恭介、どうしたの?」
「診察室、一つかして」
「どうしたの?」
「こいつちょっと診たい」
俺の後ろに隠れていたあやはの腕を掴んで前に差し出した
「...」
俯いたまま何も言わない
「あっこないだ恭介に会いに来た子だね」
「えっいつ?」
「んーっといつだっけ」
俺が知らない時にあやはがここにきた?
「まぁいいや、部屋空いてたら貸して」
「診察室1はお父さん使ってて2は大和がいて3は聡がいる」
「あいてねぇじゃん」
珍しくクリニックに家族みんな揃ってる
普段、親父と聡(長男)がクリニックで働いている
大和(次男)は他の病院の循環器で常勤医しながらたまにクリニックで手伝っていて今日は忙しくて呼ばれたんだろう
俺もたまに呼び出されたりするが兄貴ほどはない
「2階の仮眠室つかえば?」
母さんに提案された
クリニックは2階建ての一軒家になっていて1階はクリニック、2階はスタッフの休憩スペースになっている
2階の間取りは4LDKで一部屋はスタッフのロッカールーム兼更衣室、二部屋は仮眠室、もう一部屋は物置で広めのLDKはスタッフみんなの主な休憩場所
聡が奥さんと喧嘩したらここの仮眠室で寝泊まりしてる時があるくらい住むにも不自由はしない
「じゃ仮眠室借りるから親父に言っておいて」
「ほーい」
「あやは、こっちこい」
俺はあやはの手を引いてクリニック奥にある階段で2階に上がった
「ここの部屋で待ってて」
「...うん」
2階の俺のロッカーに入ってる聴診器や診察に使うキットを持って部屋に戻った
「母さんがなんか言ってたけどいつクリニックにきた」
「痛み止めもらうために来たけどいなかったから総合病院に行った」
「受付で待ってた日か」
「そう」
「インフルエンザであやはが来た日は本当たまたまだ。普段は兄貴たちが先に声がかかるから俺はほぼここにはいない」
「お兄ちゃんいるんだ、いいね兄弟...」
「一人っ子か?」
「...」
親がいないのは聞いたことあるが兄弟までは知らない
「ベッド横になって」
仮眠室とはいえ使ったら必ず母さんがシーツ洗ってベッドメイキングしてるから本当に綺麗
何も言わずにベッドに横になった
顔色は悪くない
「今日、腹痛あったか?」
「んーん」
軽い問診から始めた
「昼飯食ったか?」
「んーん」
「なんで?」
「時間なかった」
「ちゃんと食え
お腹ちょっと音聞かせて」
聴診器で音を聞いてもそこまでひどくはなさそう
ただ...明日からのことを考えると
「点滴した方がいいなぁ」
「...」
「夜、いつも通り寝てる間にするなら病院に戻る
今やるならここでやって家に帰る、どうする?」
「...」
「おーい」
「記録がある」
お馴染みの逃げ文句
「じゃあ記録終わったら点滴やるか?」
「起きてたらできないって」
「一旦やってみ?」
「だからできない!」
さっき俺の後ろで隠れてたやつとは思えないくらい俺の前だと威勢がいい
「やってみないとわからないだろ」
「無理だって」
「じゃあ向こうの病院に戻るでいいか?」
「...」
「努力して無理だったらそれでいい
やらずに無理は俺は嫌いだ」
「...」
黙って何も言わなくなった