恋は計算通り、君は想定外

2 隣の席ガチャで外れを引いた件

 
 決まってしまったものは仕方がない。とりあえず、休憩時間中に周辺をチェックしておこう。
 前の席の女子は、後ろ姿しか分からないが、早速、元中の女子とずっと喋ってる。ここで割り込むのはいきなり変な人と思われるに違いない。右側のコは‥‥いない。向こうに女子の集団がいるので、そこの一人と思われる。
 左の窓際の‥‥本来は俺が座るべき席だったとこの女子は‥‥いた。
 いるにはいるけど、予想とは違った。
 こういう時、左右どっちかの女子は、主人公と何がしかの接点があり、ふとしたきっかけで仲良くなっていくもの‥‥だと思うが。
 頬杖をついて外を眺めてる彼女は、ストレートの長い髪を、少しだけ染めてるのか、日の光の加減なのか、ちょっとだけ茶色がかって見える。顔はと言うと、目がちょっと釣り目っぽい。それでも美人というより可愛い方だろう。だから大人びた髪との比較で、ちょっと不自然に見えてしまう。
 「‥‥‥‥」
 で、彼女が何を見ているのか、俺も同じ方向を向いてみた。ここは二階。校庭の周囲には今にも散りそうな桜の木が何本か。あと、卒業式の後片付けをしている用務員さんが一名、校門向こうにはたまに通り過ぎていく車の姿‥‥見てて別に面白いものはない。
 「‥‥なに?」
 「!」
 俺の鋭い視線に気が付いた彼女は、突然声をかけてきた。それもあからさまに不機嫌そうな声と顔で。
 違う違う。主人公の隣の女子は清楚で常に優しさで満ち溢れていなければならない。こんな不機嫌陽キャではないのだ。
 しかし、向こうから声をかけてくるという荒業をしてきた以上、こちらもそれ相応の返答をしなければならない。
 こんな時、主人公ならどう返す? それを聞いた女子はどう言ってくる?
 どんな時も自然な流れで会話するのが、理想のラノベ主人公だ。
 「いや、席変わってあげようかと思って」
 「?」
 彼女は頬に当てていた手を外して、更に不機嫌さが二割増しな表情になる。
 「こっちの席なら、他の女子と話しやすいのかなって思っただけだよ」
 「は? 別に頼んでないし」
 「そうか」
 プイと横を向かれて、会話はそこで終わり。
 だから違うだろ。そこは、『ありがとうございます』と、満面の笑みをうかべてくる所だろう。
 「‥‥‥‥」
 何だかバツが悪くなったが、そこは肩をすくめるポーズ。これでヤレヤレ感がでる。
 まあいい、本番は一学期が始まってからだ。
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