私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
行き場のない感情を彼にぶつける。一ノ瀬は私が吐き出した激情を、ただ黙って受け止めた。

やがて息が切れ、自分の荒い呼吸の音だけが、静かな駐車場に響き渡った。そんな私を、一ノ瀬は諭すようにまっすぐな声で口を開いた。

「そいつにそう言えばよかったじゃん。最後まで本音でぶつからないからいつまでもメソメソすんだろ。お前は何も戦わずに、いい子のふりをして逃げてきただけ。後悔だらけのままじゃ、立ち直ることなんてできねーよ」
「……っ」

彼の言葉はナイフのように冷たく、私の心を容赦なく切り裂く。だけどその通りだった。私はこれ以上傷つくのが怖くて、ただ逃げた。

一ノ瀬は私の心を見透かすように、言葉を続ける。

「別に今からでも遅くないんじゃねーの?」
「そんな……今さら」
「今からでもあがいててみれば? だいたいそいつの巻いた種なんだし、お前がわめいて困らせたって、全部そいつの責任なわけだから。ちゃんと回収するのがお前に対する最低限の誠意ってものだろ」
「無茶苦茶な……」

そう思うのに、その言葉が、がんじがらめに縛られていた罪悪感の鎖を断ち切っていく。

いつだって憎まれ口ばかり叩く一ノ瀬に、こんな形で慰められるなんて。

その不器用な優しさが、不思議と心を楽にしてくれる。

「ありがとう、一ノ瀬。ちょっと勇気出た。もしいつか会えたら……」

< 104 / 190 >

この作品をシェア

pagetop