私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
「悪い、ちょっと待ってて」
人通りの少ない公園を横切っていると、突如一ノ瀬が、公園の公衆トイレへと方向転換した。
あんな落書きだらけの不気味なトイレ、よく入れるな。変なことに感心しながら、私は近くのベンチに腰掛ける。
彼の大きな背中が、トイレの建物の中に吸い込まれて見えなくなると、さっきまで彼の存在が遮ってくれていた夜の闇が、一気に私の上に覆いかぶさってくるようだった。急に心細くなる。
「早く戻ってきて」
そう独り言をこぼした時だった。
背後の茂みからガサガサと音がして、ぬっと一人の男が現れた。
「ひっ……!」
だ、誰? 男はにやにやと気味の悪い笑みを浮かべ、私に近づいてくる。
心臓がドクッドクッと早くなり、嫌な音を立て始める。
「お姉さん、一人? 寒い中、誰か待ってるの?」
「……っ」
全身の血の気が引く。怖くて声も出せず、後ずさろうとする私の肩に、男が馴れ馴れしく手を伸ばしてきた。
「や、やめてください」
振り払おうとするが、力が強くて振りほどけない。初老の男性に見えるが、やはり男の人には勝てない。
「かわいいね。俺と遊ぼうよ」
どうしよう……怖い。一ノ瀬、早く……。ギュッと目を閉じた時だった。
「俺の連れに何か用か?」
地を這うような低く冷たい声が、私のすぐ傍で響いた。
人通りの少ない公園を横切っていると、突如一ノ瀬が、公園の公衆トイレへと方向転換した。
あんな落書きだらけの不気味なトイレ、よく入れるな。変なことに感心しながら、私は近くのベンチに腰掛ける。
彼の大きな背中が、トイレの建物の中に吸い込まれて見えなくなると、さっきまで彼の存在が遮ってくれていた夜の闇が、一気に私の上に覆いかぶさってくるようだった。急に心細くなる。
「早く戻ってきて」
そう独り言をこぼした時だった。
背後の茂みからガサガサと音がして、ぬっと一人の男が現れた。
「ひっ……!」
だ、誰? 男はにやにやと気味の悪い笑みを浮かべ、私に近づいてくる。
心臓がドクッドクッと早くなり、嫌な音を立て始める。
「お姉さん、一人? 寒い中、誰か待ってるの?」
「……っ」
全身の血の気が引く。怖くて声も出せず、後ずさろうとする私の肩に、男が馴れ馴れしく手を伸ばしてきた。
「や、やめてください」
振り払おうとするが、力が強くて振りほどけない。初老の男性に見えるが、やはり男の人には勝てない。
「かわいいね。俺と遊ぼうよ」
どうしよう……怖い。一ノ瀬、早く……。ギュッと目を閉じた時だった。
「俺の連れに何か用か?」
地を這うような低く冷たい声が、私のすぐ傍で響いた。