私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
残酷な事実が、冷たい鉄の塊となって、私の胃の底へと、ずっしりと沈んでいった。
まさか、こんな偶然が……
だけど、美容師として仕事に復帰できるまでになったんだ。それならもう、涼介と一緒にはいないの?
それとも今もまだ、彼が側にいて支えているの? あの日から、二人は一体どうなっているの?
いくつもの答えの出ない疑問が、ぐるぐると頭の中を駆け巡る。 だけど、客と美容師というこの状況で、それを聞く術なんて私にはない。
私は沙羅さんに綺麗にカットしてもらったばかりの、少し軽くなった髪の毛先にそっと触れた。
口を結び引き、鏡の中の情けない顔をした自分を、ただ一点に見つめる。
すると鏡の奥から、沙羅さんが戻ってくるのが見えた。 長い脚をすっとスマートに運び、綺麗な姿勢で歩くその姿はどことなく、涼介さんと似ている気がした。
完璧な二人が並ぶ姿は、きっとどんな雑誌のモデルよりもお似合いなんだろう。想像しただけで、あまりの格差に、思わず自嘲の笑いさえ込み上げてきた。
こんな綺麗な人と別れて、どうして私なんかと付き合おうと思ったんだろう。
今こうやって彼女と自分を鏡越しに見比べてみても、沙羅さんより長けている部分なんて、悲しいくらい一つも見当たらない。
「お待たせしてすみません。カラー、塗っていきますね」