私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
思いがけない告白が、雷鳴のように私の心に突き刺さる。
全然知らなかった。一ノ瀬の気持ち……。それなのに私はずっと彼を振り回し、頼り切っていた。
「ごめん、頭が、混乱してて…」
かろうじて絞り出した私の声に、一ノ瀬は、私を抱きしめていた腕の力を、そっと緩めた。そして、ゆっくりと体を離すと、逃げ場のない私の瞳を、まっすぐに覗き込む。
「だろうな」
その声は怒っているでも、呆れているでもなく、ただ、全てを分かっているかのような、静かな響きを持っていた。
「今すぐ答えが欲しいわけじゃない。ただお前には俺がいるってこと、伝えたかっただけ。いつもいつもあいつに泣かされて、我慢ならなかった」
彼は真剣な声音でそう言うと、私の頬にそっと手を伸ばした。そごつごつとした指先が、優しく触れる。
「お前がまだ、あいつのこと好きなのも知ってる。だけどこれだけは覚えとけ」
彼の瞳が、真剣な色に変わる。
「俺は絶対に、お前を泣かせたりしない」
それだけを言い残すと、彼は私の髪をくしゃりと撫で、踵を返した。
その時だった。静かな部屋に、来客を知らせる玄関のチャイムが鳴った。
……誰?
「凛! いる? 俺、開けてほしい」
ドンドンとドアを叩く音と同時に、懐かしい声が部屋に届く。もしかして、涼介?
一ノ瀬は一瞬私と目を合わせると、すぐに玄関のドアを睨みつけた。