私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~

「ずっと挙動不審だったぞ。なぜかカタコトだったし」
「もうやめてよ、一ノ瀬まで。緊張するとポンコツになるの」
「ポンコツはいつものことだろ」
「はぁ!? 喧嘩売ってる?」

拳を握り、下から思いっきり一ノ瀬を睨む。 こいつにあんなシーンをみられたことすら恥ずかしいのに、さらに醜態をさらす羽目になるなんて。はぁ……

「飲もう」

こうなったら飲むしかない。よく失敗するけど、切り替えは早いタイプ。楽観主義ともいう。

心の中で言い訳して、グラスワインを勢いよく飲み干す。美味しいもの飲んで食べて忘れよう。

木崎さんだって仕事できているようなものだし、私のことなんていちいち覚えていないだろう。

「そういえば唯は?」
「あれ? いつの間にかいないね」

菜穂と二人で会場内を見回す。

すると、少し離れたところから唯ちゃんの切羽詰まった声が聞こえてきた。

「悪いですが、声かけてきたのはそちらですからね」
「だからって連絡先交換します? 私、この人の彼女なんですけど」

見れば知らない女性と言い合っている。その女性の隣には一人の男性がオロオロしていて、周りには人だかりができていた。

いったい何があった? 嫌な予感を抱えながら菜穂と二人の元へ向かう。

「唯ちゃん、どうしたの?」

肩で息をする唯ちゃんに、やんわりと背後から声をかける。すると唯ちゃんはハッとしたように、こちらを振り返った。

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