私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
目の前にある無機質なドアを、一度ノックしてからそろりと開けた。
中はひんやりとした、機械的な空気が漂っていて、複数のキーボードが規則正しいタイピング音を奏でている。
部屋の中には数人の職員がいて、みんな自分のモニターに全神経を集中させている。壁一面に設置されたサーバーラックの、無数の小さなランプが、まるで星屑のように、点滅を繰り返していた。
誰も部屋に入ってきた私には気づかない。
その中張り詰めた空気の中でたった一人、輪から外れている男がいた。一ノ瀬だ。
彼は自分のデスクの隣に置かれた段ボールに私物を一つ、また一つと、淡々と詰めている。
その光景を見た瞬間、私の胸を支配していた「どうして」という焦りが急速に色を失い、ただ心臓がぎゅっと締め付けられるような、寂しさに変わっていった。