私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
「……辞めるって、本当なの?」
震える声で近づいてきた私に、彼はゆっくりと顔を上げた。その表情は、いつもと変わらない。
「ああ。聞いたんだ」
「聞いてない! 健のメールで知ったの! なんで言ってくれなかったの!」
「お前もいろいろ大変そうだったし」
まるで他人事のように彼は言う。私のために、気遣って言わなかったの? そんなの何の慰めにもならない。
「それでも、言ってほしかった。いつ、決めたの?」
「少し前だよ。ずっと来てほしいって熱心に言われててさ。ようやく腹くくった」
「そうだったんだ。全然知らなかった」
拗ねるようにそう言うと、彼は持つ手を止め私の方へと体を向けた。