私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~

包み込むような、柔らかい笑顔。初めて会った、あの日と何も変わらない。一目で恋に落ちた、あの優しい瞳。

そんな涼介を前に、私の目の奥がジンジンと熱を帯び始めた。

「凛と離れるのは辛い。自分でも何を言ってるんだって思うよ。今の今まで、ずっと葛藤してた。気づかないふりしてこのまま、連れ去ってしまおうかって。だけど気持ちがないのに一緒にいるのは、もっと辛い」
「涼介……」
「最終勧告だ、凛」
「そんな…」
「全部、俺の気のせいだって言うなら、このまま連れて行く」

……何で。

……どうして、あなたはそんなに優しいの。

「何も言わないってことは、俺と来るってことで、いいんだな?」

ぎゅっと目を瞑ると、震える唇からようやく声を絞り出した。

「私……」

上ずる私の一言に、涼介の口元がゆっくりと、悲しい弧を描き出す。

「涼介が大好きだよ。今こうやって隣にいれることも嬉しい。ずっと一緒にいたいと思ってた。心から幸せにしたいって思ってた……でも、」
「わかってる」
「ごめんなさい。私、一緒には行けない……」

あいつが好き。一ノ瀬が、好き。
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