私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~


「やっぱりデニムで着て正解だったわ。ありがとね、助かった」

ヘルメットを脱ぎながら、あっけらかんと言う。

「じゃあな」
「あ、お茶でも飲んで行く?」
「は?」

メットの中でギロッと睨まれ、思わず後退る。

「え、なんでそんな怖い顔するの」
「男を簡単に家にあげんな、バーカ」
「えっ、あっ、ちょっと……!」

捨て台詞を吐くと、アクセルを回し、あっという間に行ってしまう。

「なによ、あんな言い方しなくても」

ほんと、口悪いんだから。だいたい一ノ瀬をそんな対象で見たことないっつーの。

「自惚れんな、バーカ」

排気ガスの匂いだけが宙に残る中、私はその後姿を見送りながら両手を口元にあて叫ぶ。

大きな声で叫んだお陰か、さっきまでの怒りも消え、なんだか馬鹿らしくも思えてきた。

バイクの音は静寂に吸い込まれ、いつのまにか聞こえなくなっていた。

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