私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
背中にひやりとした汗を垂らしながら恐る恐る顔をあげると、目の前に何度も妄想し想像した木崎さんの姿が……!
突然のことに、その場で慌てふためく。
「こちらこそ、ごめんね。急いでたもので。怪我はない?」
「は、はい……」
声がうわずる。というか、いつのまに来てたんだろう。あんなに玄関を凝視してたのに全然気づかなかった。
もしかしたら、別の入り口から入ってきた? いやその可能大だ。なんという取り越し苦労。
でもようやくまわってきたチャンス。逃すわけにはいかない。そう意気込み、意を決して口を開く。
「ハンカチを、あの……その」
だか本人目の前だと、うまく話せない。頭の中で何度も繰り返したシミュレーションしたのに……
「あ、この前の」
「は、はい」
一瞬ぽかんとしていた木崎さんだったが、すぐに思い出してくれたようで、口元に綺麗な弧が浮かぶ。
「その節はありがとうございました」
深々と頭を下げ、彼に向かって真っ直ぐ手を伸ばす。
「どういたしまして。あの後、大丈夫だった?」
「はい……」
短い返答をしたあと、シーンと静まり返る。
何か話さなきゃ。天気の話をする ?いやいや、よく考えたらそんな話したってそれ以上広がりようがない。
じゃなにか別の話題を……
一人あたふたしていると、木崎さんが「大丈夫?」と心配そうに覗き込んでいた。
「え?」
「顔、赤い気がして」