私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~

スラリと背が高く、スーツが似合ういかにも大人の男といった感じ。雰囲気が柔らかく、優しいオーラがにじみ出ている。

さらに塩顔イケメンと来たものだから、きっと彼に憧れているのは私だけではないはず。

でもあくまでも憧れ。彼とどうこうなりたいとかそういう贅沢な願望はない。推しは鑑賞するものだということは、さすがにわかっている。

「ほら、頼まれてたやつ」

そんなことを想像していると突如、低音ボイスとともに頭の上にドスっと物が落ちてきた。

「……いった」 

見れば、受付に座る私の頭にファイルを乗っける強面の男が。私のもう一人の同期であり、天敵でもある一ノ瀬優(いちのせゆう)だ。

すぐ私をからかってくるため、よく喧嘩になる。犬猿の仲ともいう。彼は情報システム課に所属するシステムエンジニアだ。

「ちょっと、やめてくれる? なんなの朝から」
「心配すんな。それ以上頭悪くならないから」
「はぁ? 喧嘩売ってる?」

じろりと睨んでファイルを強引に奪う。

とはいえ、それ以上文句は言えない。なぜなら連休前、しかも定時一時間前、私が管理していたフォルダが根こそぎ消えてしまい、一ノ瀬に「助けて!」と泣きついて探してもらったからだ。

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