私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
結局その日のうちには見つからなかった。一ノ瀬は「上司に怒られろ、バーカ」と言ってさっさと帰ってしまったのだが、もしかすると連休中に修復してくれたのかもしれない。
口では意地悪ばかり言うのに、頼み事はなんだかんだ聞いてくれるから、こいつのことがいまいちわからないとしょっちゅう思っている。
「もしかして、休日出勤した?」
「お前のためにそんなのするわけねーだろ」
「はいはい、ごめんなさい。自惚れてすみません」
「フォルダも復活してるし、ほしがってたデータもプリントアウトしてあるから」
「ありがとうございます。本当、すみません。助かりました」
手がかかる奴と言わんばかりに、眉根に皺を寄せため息をつく一ノ瀬。無言の圧やめて。そもそも元から強面なのに、そんなふうに不機嫌になるとますます怖さが増す。
きっと街中で配っているポケットティッシュは、もらえないタイプだな。私がアルバイトでも、一ノ瀬だけには渡したくない。そのくらい人相が悪い。
といってもパーツはなかなか整っていて、目は切れが長く鼻筋も通っている。黙っていればいい男。
身長は180センチくらいありそうで、居酒屋に行ったときはいつも入り口のドアをくぐるように入る。居酒屋に行っても下戸だからいつもコーラーを飲んでいるというのは、ここだけの秘密だ。