私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
食事を終え、店を出ると、夜空には満月が輝いていた。街の喧騒も、いつの間にか優しいざわめきに変わっている。
「今日はありがとうございました。とても楽しかったです」
「こちらこそ。冴島さんとお話できて楽しかったです。またお誘いしてもいいですか?」
彼の言葉に、私の胸に希望の光が差し込んだ。一ノ瀬の忠告がまだ完全に消え去ったわけではないけれど、今目の前にいる木崎さんは、どこまでも誠実で、嘘をついているようには見えない。
私の勝手な思い込みかもしれない。
「はい、ぜひ!」
笑顔で答えると、木崎さんは満足そうに目を細めた。夜風が心地よく頬を撫でる。
「……まいったな」
すると、彼が困ったように何かボソッとつぶやいたのが聞こえた。
彼の顔はビルの明かりを浴びて、普段よりも一層、深く影を落としている。どうしたんだろう?と不思議に思っていると、真剣な眼差しが、まっすぐに私を捉えた。
「今日、こんなこと言うつもりはなかったんです」
木崎さんの言葉に、私の心臓が大きく跳ねた。何が始まるのだろう、という期待と不安が入り混じる。
彼の端正な顔が、私を射抜くように見つめている。背筋がピンと伸び、鼓動が早まる。
「でも、冴島さんが可愛くて……正直に言うと、とても惹かれています」