私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
「え!? お泊り?」
翌日、医事課の休憩室は、朝からコーヒーの香ばしい匂いが立ち込め、忙しく働く職員たちの活気で満ちていた。窓から差し込む柔らかな陽光が、室内に温かい光を落としている。
そんな中、菜穂の驚く声が部屋中に響き渡り、私は慌て「シーッ」と菜穂の口の前に指を押しあてた。
だが時すでに遅く、他の事務員からチラチラと見られていることに気づく。
「ちょっと菜穂、声でかいって」
「お泊りだなんて、なんかエロいね~」
「やめてよ、もう」
こんなところで菜穂に報告した私がバカだった。もっと慎重に場所を選ぶべきだった。
だが菜穂はそんな私の心中を知ってか知らずか、にやにやしながら小突いてくる。そんな菜穂に、私は銀座の女の真相も矢継ぎ早にした。
「なるほど、元カノかぁ。その線があったか」
「元カノの一人や二人、いるに決まってるよね。あんだけかっこいいんだし」
「ちゃんと切れてるならいいじゃん」
菜穂のあっけらかんとした口ぶりに、マグカップに口を付けたまま「うん」と小さく頷く、
「とりあえず凛がすごく幸せそうで安心したよ」
菜穂は心底安堵したような表情で、私の肩をぽんと叩いた。その言葉に、私の心はさらに温かくなる。
「ありがとう、菜穂」
「凛、学生時代付き合ってた人がちょっと微妙で、それ以来、恋愛してないって言ってたじゃん」
「うん……」