私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
私は一ノ瀬の背中に顔をうずめたまま、途切れ途切れに話し始めた。
「でも、様子がずっとおかしくて……何かを隠してる。私、もうすぐ振られるんだと思う」
嗚咽交じりの告白を、一ノ瀬はただ黙って聞いていた。
やがて私の震える肩に彼がそっと手を置くと、先ほど涼介が去っていった中庭の入り口を、そこにまだいる敵を睨みつけるかのように、鋭く射抜いていた。
「あの野郎……」
その顔は、これまで見たことがないほど、険しい表情をしていた。
◇◇◇
その日、終業時間を迎えると、私は鉛のように重たい体を引きずるようにして、医事課を後にした。
今日一日、頭の中は靄がかかったようで、どうやって仕事を乗り切ったのかも覚えていない。ミスはしなかったからいいものの、社会人失格だ。
反省しながら職員出口の重いドアを押し開ける。その瞬間、むわりとした熱気が肌にまとわりついた。
「あっつ」
外は西日がさんさんと輝いていて、夕方だというのに三十度はゆうに超えていそう。
目を細め辺りを眺めていたその矢先、見慣れた人影があることに気づく。
「一ノ瀬……?」
彼はバイクに寄りかかり、スマホをいじっていたが、私と目が合うと面倒くさそうに顔を上げた。
「おせえよ」
「どうして……?」
「昼休み、お前の顔が死人みたいだったから、ちゃんと帰れるか見張ってたんだよ」
「でも、様子がずっとおかしくて……何かを隠してる。私、もうすぐ振られるんだと思う」
嗚咽交じりの告白を、一ノ瀬はただ黙って聞いていた。
やがて私の震える肩に彼がそっと手を置くと、先ほど涼介が去っていった中庭の入り口を、そこにまだいる敵を睨みつけるかのように、鋭く射抜いていた。
「あの野郎……」
その顔は、これまで見たことがないほど、険しい表情をしていた。
◇◇◇
その日、終業時間を迎えると、私は鉛のように重たい体を引きずるようにして、医事課を後にした。
今日一日、頭の中は靄がかかったようで、どうやって仕事を乗り切ったのかも覚えていない。ミスはしなかったからいいものの、社会人失格だ。
反省しながら職員出口の重いドアを押し開ける。その瞬間、むわりとした熱気が肌にまとわりついた。
「あっつ」
外は西日がさんさんと輝いていて、夕方だというのに三十度はゆうに超えていそう。
目を細め辺りを眺めていたその矢先、見慣れた人影があることに気づく。
「一ノ瀬……?」
彼はバイクに寄りかかり、スマホをいじっていたが、私と目が合うと面倒くさそうに顔を上げた。
「おせえよ」
「どうして……?」
「昼休み、お前の顔が死人みたいだったから、ちゃんと帰れるか見張ってたんだよ」