私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
悪態をつきながらも、その瞳が心配そうにこちらを窺っているのが分かる。

「そんな、大袈裟だよ。大丈夫だから」

無理やり笑みを作って、腕に拳を作って見せる。

すると、一ノ瀬はチッと舌打ちし、バイクのそばに置いていたヘルメットを無造作に放り投げた。

「どこが大丈夫だ。まだ土みたいな顔色しるぞ」

一ノ瀬の言葉と同時に飛んできたヘルメットを、慌てて受け取る。

「ちょっと! 危ないでしょ」
「いいから乗れ。文句は聞かない」
「でも……」
「電車で倒れられる方が迷惑だ。さっさと乗れ」

有無を言わせぬ口調に、睨みながら頷く。

「わかった」

彼に何を言っても無駄だと観念した私は、ぶっきらぼうに返事をすると、慣れない手つきでヘルメットをかぶる。だけど、顎紐がうまくできない。

「貸して」

てこずっていると、一ノ瀬が紐に手を伸ばし、黙ってカチリと留めてくれる。不意に触れた一ノ瀬の指先が、わずかに熱を持っていることに気づいた。

「しっかり掴まってろよ」
「はーい」

彼の後ろに座り、言われるがままにその広い背中に手を回す。ジャケット越しに伝わる、ごつごつとして、無骨な、だけど、どうしようもなく頼もしい背中

エンジンの小気味よい振動が体に伝わると同時に、彼の背中から確かな安心感が流れ込んでくるようだった。

「具合、大丈夫か?」

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