私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
弱々しく謝ると、彼はコンビニの袋を突き出した。中にはスポーツドリンクと栄養剤が見える。

「ちゃんと食って寝ろ。どうせろくに食ってねぇんだろ」

俯いたままの私に、一ノ瀬は静かだが強い口調で告げる。

「よくわかったね。食べる気分になれなくて」
「いつまでうじうじしてるんだよ。お前、そんな弱い女じゃないだろ。仕事でクレーマー相手にしてる時の方が、よっぽどいい顔してるぞ」
「え? 嘘……見たことあるの?」

プロとして完璧に作り上げたあの仕事用の顔を、この男に見られていた!?

点と点が繋がった瞬間、顔がかぁっと、熱くなる。そんな私の混乱を、彼は気にも留める様子もなく、続ける。

「闘牛士みたいだったぞ」
「ちょっと! 誰が闘牛士よ!」

予想外すぎる例えに、悲しみよりも羞恥と怒りがこみ上げ、反射的に一ノ瀬を小突く。だが彼の方が一枚上手で、それは空振りに終わってしまった。

「クレーマー大変なんだからね!この前なんか二時間も拘束されたんだから」

戻ってきた威勢でそう文句を言うと、一ノ瀬は「その調子でいいんじゃないの?」とこともなげに言った。

「そっちの方が、よっぽどお前らしい」

彼は一度言葉を切ると、街灯のオレンジ色の光の下で、私をまっすぐに射抜いた。その瞳は真剣で、冗談を言うときの光は一切宿っていない。

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