私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
切ないラブソングの歌詞が、ナイフのように胸に突き刺さることもあるけれど、それでも私には菜穂や、唯ちゃんがいる。それに一ノ瀬だって。

少しずつだけど、立ち直りつつあった。

「そういえば明日、凛の誕生日でしょ?なんか予定ある?」
「ううん、何も考えてない」

苦笑いをこぼしながら、かぶりを振る。

本来なら、誕生日は涼介と旅行にでも行こうと話していた。

『温泉もいいけど、ディズニーもいいね』
『思い切って海外行っちゃう?』

そんな他愛ない会話を満面の笑みでしていたのが、ついこの間のことのよう。結局、何一つ実現しなかったけれど。

「じゃあ、みんなでパーッと盛り上がりますか!」

私の表情にかすかな影がよぎったのを、菜穂は見逃さなかったのだろう。彼女は感傷的な空気を吹き飛ばすかのように、太陽みたいな笑顔で言った。

「いいの?ありがと」
「当たり前でしょ。一ノ瀬たちにも、声かけとくね」

そう言うと、菜穂は今日の持ち場である、会計窓口へと向かう。その頼もしい背中を見送ると、一度だけ深く息を吸いこんだ。

友達がいてよかった。過去を嘆いて悲しむのはもうよそう。

院内の大きな窓から、一筋の鋭い光となって差し込んできて、私の足元まで伸びてきた。

それは新しい一日を始めるための、スタートラインのように見えた。
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