(短編・全紹介)紫貴折々

オススメ4【甘々に囁いて】ファン限定短編

宣伝:未掲載
登場人物:和藤(わと)・白藍(はくらん)


本日の魅惑のスイーツは、C形コーンです。
甘い時間に酔うのは、白藍じゃない……俺だ。

いつもの廊下……行き止まり。
行き場のない、人から孤立したような空間……
そこでの甘い時間は、切り離されたかのように静かで幻想的……
「白藍、今日のお菓子は……これだよ?」
キャラメル味のC形コーン……
これは、俺達の時間の様だ。
甘くて、儚く……脆くも崩れて消える……

俺は一つを口に入れ、白藍を誘う。
お菓子を求め、俺の口に唇を重ね……柔らかい舌が躊躇なく入る。
「……ん……ん??」
目を開け、睨んだ白藍。
口が離れ、舌があっけなく出て行く。
彼女が求めるのは、俺じゃない……
まだ、俺を求めていない。いつか……俺を求めて。
お菓子に、身を委ね……俺に触れられるのを許すまでになったのだから……
いつか……
「和藤、卑怯だぞ!!お前だけで、美味しいものを食べて……私を騙したな!!」
ご機嫌斜め。
それでも可愛いと思い裏腹に……壊してしまいたい衝動。
「俺は正直に言うよ。このお菓子は口で溶ける……試してみたいだろ?な、白藍……口を開けて?甘さを求めて……」
一粒を、白藍の口に運ぶ。
“溶ける”
その言葉に、頬を染め……輝く瞳で、そっと口を開く。
「舌を出して……甘さを感じて。」
俺の歪んだ愛情……
植え込む甘さと与える俺の存在が、その身体に沁みこめばいい。
何も知らない白藍……俺を溺れさせた罪は、重いよ?
君も俺に落ちればいい……

舌の上に置いたC形コーンを人差し指で押さえる。
白藍の舌の熱は、それを溶かしていく……
【ゴクンッ】
甘さに唾液が溢れ。白藍は、俺の指も口に入れ……唾を呑み込んだ。
舌が俺の指を包むようになぞる……
【ゾクッ】
この甘さに、酔っているのは……
やはり、俺なんだ。
【ゾクゾク……】
力の加わった歯が、俺の指を甘噛みする。
苦しそうな表情で、俺を見つめ……
指を解放する唇は、誘うように潤んでいる。
「白藍……」
白藍の口の中の熱が、指から逃げていく……
寂しさに、その指を自分の唇に当てた。
もう片手を、白藍の頬に当てる。
無意識……それとも、誰かにしているのか?
自然に、俺の手のひらに頬をすり寄せ……流し目で俺を見つめる。
そして、いつもの言葉……
「その眼で……見るな……」
お前が、それを言うのか?そんな眼に……
俺が狂っているんだぞ?
汚してやる……
純粋に、お菓子を求めればいい……
そして、いつか……俺を求めればいい……




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