前世を思い出して賢くなったぼく、家族仲を改善します!
おそらくシリルお兄様は寂しかったんだと思う。両親に厳しく育てられて、ぼくとも接することがあまりなかったから。家族という存在が、お兄様の中では希薄だったのだろう。
だから唐突にぼくに命を救われて(?)嬉しかったんだと思う。それにしても。
「フィルは偉いね。自分だって怪我する可能性があったのに、僕を助けるために飛び出してくるなんて」
「はぁい」
「でもあまり危ないことはしたらダメだよ」
「……はぁい」
にこにこ笑顔でぼくに話しかけてくるシリルお兄様に、ぼくは適当に相槌を打っておく。すんごく雑に返答しているのに、シリルお兄様は気にする素振りを見せない。浮かれすぎだと思う。
シリルお兄様は、とってもクールだと思っていた。でも違うのかもしれない。
ぼくのお兄様、実はちょっぴりチョロいのかもしれない。
一転してぼくに笑顔を向けるお兄様は、ただいまぼくと一緒におやつを食べている。いつもはひとりで食べているんだけどな。でも誰かと一緒に食べるおやつは楽しいと思う。
お兄様お気に入りの庭園にて。
クッキーを頬張るぼくの事をシリルお兄様は楽しそうに眺めている。
よくわからないけど、お兄様と仲良くなれたので結果的には大成功である。ぼくの家族仲改善計画が一歩前進した。
正直シリルお兄様が一番仲良くなるのに苦労しそうだと思っていたので、拍子抜けである。
「いやぁ、フィル様のおかげで助かりました」
シリルお兄様が毒入り紅茶を飲む前に阻止してくれたのはお手柄だとディルクは褒めてくれる。結果的にはお兄様の紅茶をこぼしたので、ぼくのお手柄ということになるけど。
まぁ、たしかにね。あのままお兄様が口をつけていれば、お兄様の命が危ないところであった。なのでぼくは偉い。しかし毒の存在に気がついて、ナイフを持った男を確保したディルクもお手柄である。
「ディルクもお手柄でーす」
「ありがとうございます!」
ぼくの言葉にへらっと笑うディルクは、やっぱり犬っぽい。ぶんぶんと揺れ動く尻尾の幻覚が見える気がする。
ディルクは絶対に前世が犬。ふむふむ納得したぼくは、クッキーをさくさく頬張る。
「フィルはなにも考えていないのだとばかり。でも本当は僕のことを心配してくれていたんだね。それに勇気もある。すごいね」
にこにこと嬉しそうに語るシリルお兄様に、ぼくは苦笑を返しておく。お兄様はぼくを褒めているつもりなのだろうけど。やんわりと馬鹿にされているように感じてしまうのはなぜだろうか。
どうやらお兄様、ぼくの事をなんにも考えていないお気楽五歳児だと思っていたらしい。間違ってはいない。前世の記憶を思い出す前のぼくは、たしかにお気楽五歳児だった。
お兄様と仲良しになったぼくを、ネッドは優しい目で見守っている。今までのぼくとお兄様が仲良くお茶するなんて信じられない。お兄様がチョロくて助かった。
「フィル。クッキーついてるよ」
目元を綻ばせたお兄様に指摘されて、さっと口元を拭っておく。危ない危ない。ぼくのクールなイメージが壊れるところであった。
前世を思い出して成長したぼくは、シリルお兄様と同じくクール系美少年を目指そうと思う。ぼくならいける。
「ぼくは今日からとってもクールになります」
笑顔を引っ込めて、クールなお顔を作っておく。優雅にクッキーをもぐもぐしていれば、手際よくお茶のおかわりを淹れてくれたディルクが「フィル様がクール?」と首を捻った。なぜそこに疑問を抱くのか。
「フィル? そんな険しい顔してどうしたの。お腹いっぱい?」
「これは険しいお顔じゃなくて、クールなお顔です」
シリルお兄様の間違いを訂正するが、お兄様はディルクと一緒になって「クール?」と首を捻ってしまう。だから、どうしてそこに引っかかるのだ。
背筋を伸ばして、腕を組む。すごくクールな仕草を実演してみせたのだが、困ったような空気になってしまった。
「フィルは笑っている方がいいよ」
「むぅ」
シリルお兄様に言われて、しゅんと肩を落とす。けれどもまだ五歳のぼくである。クール系よりも素直に可愛いを追求するべきなのかもしれない。
だが今はやるべき問題が山積みである。ぼくの目標は家族仲を改善すること。シリルお兄様との関係は改善できたが、まだ両親が残っている。
実を言うと、ここもなかなかに難しい。両親は割とぼくを溺愛しているのだが、シリルお兄様に対しては少々厳しいところがある。跡継ぎとして期待しているがゆえなのだろうが、それにしてもお兄様と両親の仲はぎこちない。
おまけに最近、両親の口喧嘩が多い。まさか離婚なんて話にならないだろうなと内心で心配している。
とりあえずは両親が離婚なんて話にならないように気をつける。そんでもって、もっとシリルお兄様に優しくしてあげてほしいとお願いしたい。それにはシリルお兄様の協力が不可欠だ。
「シリルお兄様はとってもかっこいいでーす」
「嬉しいことを言ってくれるね」
チョロいお兄様は、褒めておけばそれなりに平和な時間が流れる。
「お父様とお母様も、お兄様のこと褒めてました!」
「……」
途端にすんと真顔になったシリルお兄様に「ひぇ……!」と頭を抱える。ディルクが「シリル様、顔! 顔が怖いです!」とわたわた指摘している。
え、待って。もしかしてお兄様と両親の仲って、ぼくが考えている以上に酷いのだろうか?
だってお父様お母様と口にしただけで、この凍るような空気である。
ぼくによるぼくのための家族仲改善計画、はやくも挫折の危機……!?
だから唐突にぼくに命を救われて(?)嬉しかったんだと思う。それにしても。
「フィルは偉いね。自分だって怪我する可能性があったのに、僕を助けるために飛び出してくるなんて」
「はぁい」
「でもあまり危ないことはしたらダメだよ」
「……はぁい」
にこにこ笑顔でぼくに話しかけてくるシリルお兄様に、ぼくは適当に相槌を打っておく。すんごく雑に返答しているのに、シリルお兄様は気にする素振りを見せない。浮かれすぎだと思う。
シリルお兄様は、とってもクールだと思っていた。でも違うのかもしれない。
ぼくのお兄様、実はちょっぴりチョロいのかもしれない。
一転してぼくに笑顔を向けるお兄様は、ただいまぼくと一緒におやつを食べている。いつもはひとりで食べているんだけどな。でも誰かと一緒に食べるおやつは楽しいと思う。
お兄様お気に入りの庭園にて。
クッキーを頬張るぼくの事をシリルお兄様は楽しそうに眺めている。
よくわからないけど、お兄様と仲良くなれたので結果的には大成功である。ぼくの家族仲改善計画が一歩前進した。
正直シリルお兄様が一番仲良くなるのに苦労しそうだと思っていたので、拍子抜けである。
「いやぁ、フィル様のおかげで助かりました」
シリルお兄様が毒入り紅茶を飲む前に阻止してくれたのはお手柄だとディルクは褒めてくれる。結果的にはお兄様の紅茶をこぼしたので、ぼくのお手柄ということになるけど。
まぁ、たしかにね。あのままお兄様が口をつけていれば、お兄様の命が危ないところであった。なのでぼくは偉い。しかし毒の存在に気がついて、ナイフを持った男を確保したディルクもお手柄である。
「ディルクもお手柄でーす」
「ありがとうございます!」
ぼくの言葉にへらっと笑うディルクは、やっぱり犬っぽい。ぶんぶんと揺れ動く尻尾の幻覚が見える気がする。
ディルクは絶対に前世が犬。ふむふむ納得したぼくは、クッキーをさくさく頬張る。
「フィルはなにも考えていないのだとばかり。でも本当は僕のことを心配してくれていたんだね。それに勇気もある。すごいね」
にこにこと嬉しそうに語るシリルお兄様に、ぼくは苦笑を返しておく。お兄様はぼくを褒めているつもりなのだろうけど。やんわりと馬鹿にされているように感じてしまうのはなぜだろうか。
どうやらお兄様、ぼくの事をなんにも考えていないお気楽五歳児だと思っていたらしい。間違ってはいない。前世の記憶を思い出す前のぼくは、たしかにお気楽五歳児だった。
お兄様と仲良しになったぼくを、ネッドは優しい目で見守っている。今までのぼくとお兄様が仲良くお茶するなんて信じられない。お兄様がチョロくて助かった。
「フィル。クッキーついてるよ」
目元を綻ばせたお兄様に指摘されて、さっと口元を拭っておく。危ない危ない。ぼくのクールなイメージが壊れるところであった。
前世を思い出して成長したぼくは、シリルお兄様と同じくクール系美少年を目指そうと思う。ぼくならいける。
「ぼくは今日からとってもクールになります」
笑顔を引っ込めて、クールなお顔を作っておく。優雅にクッキーをもぐもぐしていれば、手際よくお茶のおかわりを淹れてくれたディルクが「フィル様がクール?」と首を捻った。なぜそこに疑問を抱くのか。
「フィル? そんな険しい顔してどうしたの。お腹いっぱい?」
「これは険しいお顔じゃなくて、クールなお顔です」
シリルお兄様の間違いを訂正するが、お兄様はディルクと一緒になって「クール?」と首を捻ってしまう。だから、どうしてそこに引っかかるのだ。
背筋を伸ばして、腕を組む。すごくクールな仕草を実演してみせたのだが、困ったような空気になってしまった。
「フィルは笑っている方がいいよ」
「むぅ」
シリルお兄様に言われて、しゅんと肩を落とす。けれどもまだ五歳のぼくである。クール系よりも素直に可愛いを追求するべきなのかもしれない。
だが今はやるべき問題が山積みである。ぼくの目標は家族仲を改善すること。シリルお兄様との関係は改善できたが、まだ両親が残っている。
実を言うと、ここもなかなかに難しい。両親は割とぼくを溺愛しているのだが、シリルお兄様に対しては少々厳しいところがある。跡継ぎとして期待しているがゆえなのだろうが、それにしてもお兄様と両親の仲はぎこちない。
おまけに最近、両親の口喧嘩が多い。まさか離婚なんて話にならないだろうなと内心で心配している。
とりあえずは両親が離婚なんて話にならないように気をつける。そんでもって、もっとシリルお兄様に優しくしてあげてほしいとお願いしたい。それにはシリルお兄様の協力が不可欠だ。
「シリルお兄様はとってもかっこいいでーす」
「嬉しいことを言ってくれるね」
チョロいお兄様は、褒めておけばそれなりに平和な時間が流れる。
「お父様とお母様も、お兄様のこと褒めてました!」
「……」
途端にすんと真顔になったシリルお兄様に「ひぇ……!」と頭を抱える。ディルクが「シリル様、顔! 顔が怖いです!」とわたわた指摘している。
え、待って。もしかしてお兄様と両親の仲って、ぼくが考えている以上に酷いのだろうか?
だってお父様お母様と口にしただけで、この凍るような空気である。
ぼくによるぼくのための家族仲改善計画、はやくも挫折の危機……!?
