君のとなりで、恋をする
⸻練習後。


汗と熱気がこもった体育館で、私と萌はタオルを集めていた。

籠いっぱいになった布を抱える腕にずしりと重さがのしかかる。

でも不思議と苦じゃなかった。

――むしろ、心の中に燃える熱が支えてくれるようだった。


「翠ちゃん、ありがと! 私、先輩に話しかけてくるね!」


萌はそう言って、また先輩の輪に駆けていった。

私はその背中を見送りながら、胸の奥に手を当てる。

さっき呼ばれた“長谷川さん”という一言。

それは萌にも、他の誰にも聞こえていたはずなのに――なぜか私だけの宝物みたいに思えた。

夕方の光が体育館の窓を透かして差し込む。

埃がきらきら舞う中で、私はひとり、小さく息をついた。


(明日も・・・呼んでくれるかな)


そんな期待を抱く自分が、少し怖かった。

でも同時に、その怖ささえ甘くて、心の奥にそっと沈んでいった。

──その日、私は初めて「自分がここに居てもいいのかもしれない」と思えた。


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