君のとなりで、恋をする

5話 揺れる立場

──練習後の体育館。


タオルを片付けていると、萌がちらりと私を見て、わざと明るい声をあげた。


「ねえ、翠ちゃん。これも片付けておいてくれる? 私、先輩に呼ばれてるからさ」


笑顔で言われれば、断れない。

胸の奥で小さなため息が丸くふくらむ。


(また、私か)


と、喉の奥まで来た言葉を飲み込む。

そのやりとりを見ていた、莉子が口を開いた。


「ねえ、それくらい自分でやれば?翠ばっかに押しつけてさ」

一瞬、空気が止まる。

萌は「なにそれ〜」と肩をすくめ、すぐに笑顔を貼り直した。


「冗談だって。ほら、急ぎで呼ばれてるの。ね、お願い」


私は小さく首を振って、場を収める。


「莉子、大丈夫。私がやるから」


波風を立てたくない気持ちが、また私を先に動かした。





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