君のとなりで、恋をする
一人でタオルを回収していると、不意に声が落ちてきた。


「遅くまで残ってんだな」


振り向けば、結城先輩が、差し入れの袋を片手に立っていた。

窓から差し込む夕陽が、先輩の肩口を細く縁取っている。

汗に濡れた前髪が額に貼りつき、息は少しだけ速い。


「今これ、もらったんだけど……チョコとクッキー、どっち好き?」

「え? あ、えっと……チョコです」


答えた瞬間、先輩はためらいなくチョコを差し出す。

指先が触れそうになって、息が止まった。

どきん、と胸の奥で跳ねる音が、耳の内側に響く。


(聞こえてないよね……)


自分の鼓動だけが大きくなって、体育館の静けさに滲んでいく気がした。


「ありがとう、ございます……」


かすれた声。

うまく笑えた自信がない。


『遅くまで残ってんだな』


ただそれだけの言葉。

けれど、見ていてくれたことがわかって、胸が熱くなった。

ほんの一瞬の会話なのに、何度も思い返してしまう気がした。





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