君のとなりで、恋をする
──部活動見学の日。


体育館の扉を押すと、湿度と熱、音の層が一気に押し寄せた。

ボールが床を打つ乾いた音、コーチの指示、バッシュの擦れるリズム。

視線がひとりの選手を追う。

ミドルで受けた瞬間、空気が変わる。

跳躍が一拍、空中で静止して見え、次の瞬間ネットが揺れた。

遅れて広がる歓声。

私は呼吸のタイミングを外す。


(綺麗……)


その「綺麗」に、自分は含まれない。

体育館の端で手すりの冷たさを確かめながら、ただ見つめた。

萌はすでに他の見学者と馴染んでいる。

入部希望者に白い紙が配られる。


「書こうよ、翠ちゃん!」


背中を押され、私は名前を書いた。

長谷川翠。

黒い線が並ぶだけなのに、胸の奥がじんわり熱を帯びた。



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