君のとなりで、恋をする
──そして、美月の教室。


席に着いた途端、周囲の女子たちが一斉に盛り上がっていた。


「ねえ、さっきの電車で見た人いる?」

「結城、1年の子のこと庇ってたでしょ! やばくない?」

「かなりいい感じだったよね~」

「あの子誰?」

「男バスマネの長谷川って子じゃない?」

「うそっ! そうなの?」

「その後も一緒に登校してたよねー」

「カバン持ってあげたりしてた! 優しすぎでしょ」


楽しげに弾む声が、机の上で跳ねるみたいに広がる。

美月はノートをめくる手をほんの一瞬止め、視線を伏せた。

まぶたの裏に、さっき聞いた名前と、既に知っている顔が浮かぶ。

すぐに取り繕うように微笑み、何事もなかったようにページをめくり直す。

けれど胸の奥には、冷たい痛みが静かに広がっていた。


(噂になるのも、時間の問題か……)


小さく息を吐き、誰にも聞こえない声で、そっと呟く。


「……やっぱり特別なんだ」


その言葉は、ノートの紙に吸い込まれるように消えていった。






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