君のとなりで、恋をする

12話 揺れる余韻


──朝から、心臓が落ち着かなかった。


昨日の電車での出来事。


「危ないから、じっとしてろよ」


背中を庇ってくれた結城先輩の声が、何度も頭の中で繰り返される。

あの時の距離、腕の力、制服越しに感じた温度。

思い出そうとしなくても、勝手に蘇ってしまう。


(……なんで、あんなことを私に……)


考えるたびに顔が熱くなる。

昨夜はほとんど眠れず、布団の中で何度も寝返りを打った。

目を閉じれば、電車の揺れと「じっとしてろよ」の声ばかりが浮かんできて、天井を見つめたまま朝を迎えてしまった。


「……寝不足……」


小さく呟きながら鏡を見ると、ほんの少しだけ目の下に影があった。

でも、心臓の高鳴りだけは、妙にくっきり元気なままだった。






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